ATSUKOさんのご依頼で誂えた化粧袋。
御希望は「上等な化粧筆を購入したのを機会に、
化粧道具一式が収まる少し大きめのもの。できれば洗えるように。」
というものでした。
(2007年11月初旬に納品させていただきました。)
生地は、ぶん屋所蔵の伊勢型藍染めの古布を御指定いただきました。
受注した際、主人のひらめきは、「数奇屋袋」か「袱紗封筒」だったようです。
ATSUKOさんは、茶道もたしなむ方ですので、数奇屋袋のデザインも
お気に召したでしょう。
ただ、数奇屋袋は、洋形封筒のような形で、中のものは出し入れしやすいが
入れ口が広く、容量が若干少なくなる、という懸念がありました。
化粧筆だけの収納袋でしたら、雰囲気はよさそうですが、
コンパクトや化粧瓶、その他こまごましたものも入れられるのでしたら
数奇屋袋型は、その入れ口が広いという便利さが
中のものが安定しない、という不便さにもつながってしまいます。
とは言え、わたしにも具体的なイメージが付かず、
数奇屋袋の口を狭くする方法で、相談は進みました。
主人がいろいろなスケッチをし、だいたいこんな印象でいこう、と
ある程度の方向が決まりかけた時、
少し前に試作で作った「銭入れ」が目に留まりました。
「この型のほうが、お前が言う不具合には強いんじゃないか」
そのとおりです。
銭入れは、小銭が落ちないように、深い袋になっていて、
折り曲げてくるくると紐で留める造りをしています。
数奇屋袋と銭入れ、それぞれの良いとこを取り入れた、
自作の化粧袋のデザインが完成しました。
それは、数奇屋袋のように「かぶせ」が封筒式で、
銭入れのように、入れ口をかぶせに少し重ね、かぶせを折り曲げた時に
袋部分の口が折れるような仕組みにです。
私のアイデアで、手前のポケットは2分割しました。
選んでいただいた蜻蛉玉は紐の先につければ映える!と
手を打ちました。
講演等で化粧道具一式を持ち歩くこともあるとおっしゃる
ATSUKOさん。
試作品ができたと報告しましたら、遠方からぶん屋へ
お越しくださいました。
店頭で実際の化粧道具をすべて入れてみて、
きちんと収まることをご確認くださいました。
あのときは、御足労くださいましてありがとうございました。
今では、きっともう化粧袋はATSUKOさんの手になじんで
いることと存じます。
お誂えには時間も手間も、お客様の御面倒もおかけしますが、
他には無い、お客様好みの仕様の唯一無二の逸品が
出来上がります。
このときの試作品はそのまま商品としてぶん屋においてございます。
ご興味のある方は、実際にお手にとってごらんくださいませ。