季節の色は心に届く

季節の色は心に届く


外に出たら、朝からの雨は止んで
日が差していた。
雲がちぎれて、東へぐんぐん流れている。
空は、春霞から甕覗(かめのぞき)色へと移っている。

雨のせいで黄色い花弁を閉じていた方喰(かたばみ)が、
明日の晴れにはまたかわいい花を開くことだろう。

早春を告げる梅は散り、沈丁花(じんちょうげ)の香りが
鼻をくすぐり始めた。
花粉症の鼻にはちょっと刺激が強いが、近づいて、
深く吸い込まずにはいられない。

じっと耐える冬は、枯れ枝も、常緑樹も、空もみな、
墨を混ぜたような景色を見せる。

ところが春の筆は、梅の紅白、菜の花や方喰の黄色を加わえ、
空は鼠(ねず)が抜けて明るい光が降り注ぐ。
わたしたちは、自然と季節の色を心へ取り込んでいる。

その証拠に、春は明るい服が着たくなる。
それも南国の花のような「パキッ」とした色ではなく、
霞んだようなやさしく甘い色。
桜の花のように、近くで見たら白く思うのに、
遠くで見るとほんのりと「桜色」をしているような。

ぶん屋は、凧へ向けての仕事が活気付いてきていて、
わたしたち夫婦の心は、皐月の空へ向いている。
青い空と、若い緑。
五月の光はすっかり鼠が抜けて、ますます銀が冴えてくる。

日本の自然には、本来、あんまりびっくりするような色は無い。
洋が持ち込んだきっぱりとした色は、目を引くが、馴染まない。
日本の光には、日本の自然の色がすんなりと落ち着く。

色は、人の心が見ているものだ、と教わった。
日本にいるのだから、日本の色を心に持とう。
忙しい毎日だからこそ、季節が見せる色に心を留めて、
次の季節に思いをはせよう。

心に届く次の季節の色をわくわくしながら待つ楽しみを持とう。


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